3.4 冷凍機・ヒートポンプによる空気調和(T-4)


3.4.1 実験目的
 本実験では一般的に用いられる蒸気圧縮式冷凍機による空気調和(空気の温度と湿度の調整)での,空気の温度と湿度の変化を測定する.また,エアコン(冷凍機・ヒートポンプ)の性能に熱源の条件がどのような影響を与えるかを明らかにする.実験装置は家庭用のエアコンに一般的についている冷房機能および除湿機能と同じ動作をさせる.

3.4.4 実験装置
 図3.4.4に実験装置の概略図を示す. 蒸気圧縮式冷凍機の凝縮器で熱交換をする高温熱源は水(図中黒線), 蒸発器(冷却装置)で熱交換する低温熱源はダクト内の空気である. 水と冷媒の熱交換をする凝縮器にはシェルアンドチューブ型熱交換器を, 空気と冷媒の熱交換器をする蒸発器にはクロスフィン型熱交換器を用いている. 水の流量はフロート式流量計により測定している. 冷凍機は,冷媒にフロン(R22)を用い, 圧縮機入口(状態点1)・出口(状態点2), 凝縮器出口(状態点3), 蒸発器入口(状態点4), 蒸発器出口(状態点5)の冷媒温度, 圧縮機入口(状態点1)・出口(状態点2)の冷媒圧力, 凝縮器と膨張弁の間で冷媒流量を測定している.空気は250mm×250mmの矩形ダクト内を送風装置により流れ, ダクト内で空気調和を行う. ダクト内では, 冷凍機を用いた冷却装置により冷却する. また, 冷却装置では減湿も行う. 冷却装置での減湿により空気中より取り除かれた水の体積をメスシリンダーにより測定する. 風量は最大13m3/hまでインバータ制御によって任意に調整でき, ダクト出口の流速を風速計により測定している. ダクト内では5ヶ所に乾湿球温度計を設置し, 各観測点の空気の温度と湿度を測定している. 実験では冷却装置前後での空気の温度と湿度の変化を確認する.

図3.4.4 実験装置概略図

図3.4.4 実験装置概略図

3.4.5 実験条件および実験方法
 実験は低温熱源であるダクト内の空気と高温熱源である冷却水の条件を変えておこなう.低温熱源であるダクト内空気の速度,高温熱源である冷却水の流量,温度を実験時に指示された条件に合わせる.実験装置の条件合わせは,実験装置本体操作盤および操作表示盤のスイッチや調節器を用いてTAが行う.操作後, 以下の手順で実験を行う.
  1. 気温を測定する.
  2. 運転が定常状態に達し測定値の変動が小さくなっているかを確認する.
  3. 定常状態に達したら測定を開始する.測定時間を計測し始めるのと同時に,積算冷媒流量計の値をリセットし,冷却装置から出ているチューブの先にメスシリンダーを設置する.
  4. 所定の計測時間の経過の後に,測定を行う(測定値表を実験時に配布する). 測定した冷媒の圧力(PR1,g, PR2,g)はゲージ圧(大気圧との差圧)であるので,次式により絶対圧に変換する.大気圧Paは0.1MPaとする.
    PR[MPa] = PR,g [MPa]+ Pa[MPa]
  5. データの整理を行い,結果について考察し,次の条件を決める.
  6. (2)-(4)の手順を繰り返す.

3.4.6 実験データの整理方法
・冷凍サイクル P-h線図
 条件ごとに別のP-h線図[6](実験時に配布する)に点をプロットし変化を線で繋ぐ.図3.4.3と近い形となるので,参考にしてプロットするとよい.図はレポートに綴じ提出すること.
 冷媒の状態点2(圧縮機出口→凝縮器入口)を冷媒の絶対圧力PR2[MPa]と測定温度TR2より,P-h線図上にプロットする(点を書き隣に「2」を記入する).横軸の値から冷媒比エンタルピー hR2[kJ/kg]を求める.次に, 熱交換対象である水の状態点を違う色でプロットする. 水の出口温度TEout[℃]の温度に対応する飽和圧力と, 冷媒と同じ比エンタルピーの値の交点を違う色でプロットする(「2”」と記入する). ここで水の温度は冷媒の温度より低いため, 「2”」は「2」の下になるはずであるので確認する.
 冷媒の状態点3(凝縮器出口→膨張弁入口)を冷媒の絶対圧力PR2[MPa](凝縮器内では圧力がほとんど変化しないため,同じ圧力とする)と測定温度TR3[℃]より,P-h線図上にプロットする(「3」).横軸の値から冷媒比エンタルピー hR3[kJ/kg]を求める.測定温度が飽和温度であった場合は, 飽和線上(液側)にプロットし,その点の冷媒比エンタルピーを求める.次に, 熱交換対象である水の状態点を違う色でプロットする. 水の入口温度TEin[℃]の温度に対応する飽和圧力と, 冷媒と同じ比エンタルピーの値の交点を違う色でプロットする(「3”」と記入する). ここで水の温度は冷媒の温度より低いため, 「3”」は「3」の下になるはずであるので確認する. 水の入口「3”」と出口「2”」を直線で結び, 高温熱源である水の温度変化を示す.
 冷媒の状態点4(膨張弁出口→蒸発器入口)は膨張弁での変化(3→4)を等エンタルピー過程(hR4=hR3)とし,圧力 PR1[MPa]と冷媒比エンタルピーhR4(= hR3)より状態点を求めP-h線図上にプロットする(「4」と記入する).また, 熱交換対象である空気の状態点を違う色でプロットする. 空気の出口乾球温度TA4[℃]の温度に対応する飽和圧力と, 冷媒と同じ比エンタルピーの値の交点を違う色でプロットする(「4’」と記入する). ここで空気の温度は冷媒の温度より高いため, 「4’」は「4」の上になるはずであるので確認する.
 冷媒の状態点1(蒸発器出口→圧縮機入口)を冷媒の絶対圧力PR1[MPa]と測定温度TR1より,P-h線図上にプロットする(「1」と記入する).横軸の値から冷媒比エンタルピー hR1[kJ/kg]を求める.冷媒の状態点4点(「1」,「2」,「3」,「4」)を四角形となるように直線で結び, 冷媒の状態変化を示す. また, 熱交換対象である空気の状態点を違う色でプロットする. 空気の入口乾球温度TA3の温度に対応する飽和圧力と, 冷媒と同じ比エンタルピーの値の交点を違う色でプロットする(「1’」と記入する). ここで空気の温度は冷媒の温度より高いため, 「1’」は「1」の上になるはずであるので確認する. 空気の入口「1’」と出口「4’」を直線で結び, 低温熱源である空気の温度変化を示す.
・冷凍サイクル 熱交換量と仕事率
 蒸発器(冷却装置)での空気から冷媒への質量流量あたりの伝熱量qE[kJ/kg],凝縮器での冷媒から水への質量流量あたりの伝熱量qC[kJ/kg],圧縮機で冷媒にされた質量流量あたりの仕事率w[kJ/kg]を, 冷媒の比エンタルピーh[kJ/kg]の変化により求める.  凝縮器(状態点2→3)での冷媒から水への質量流量あたりの伝熱量qC[kJ/kg]は,凝縮器入口(状態点2)の冷媒比エンタルピーhR2[kJ/kg]と凝縮器出口(状態点3)hR3[kJ/kg]の差より次式となる.
qC = hR2hR3
 蒸発器(状態点4→1)での空気から冷媒への質量流量あたりの伝熱量qE[kJ/kg]は,蒸発器出口(状態点1)の冷媒比エンタルピーhR1[kJ/kg]と蒸発器入口(状態点4)hR4(= hR3)[kJ/kg]の差より次式となる.
qE = hR1hR4
 圧縮機(状態点1→2)での冷媒がされた仕事率w[kJ/kg]は,蒸発器出口(状態点1)の冷媒比エンタルピーhR1[kJ/kg]と凝縮器入口(状態点2)hR2[kJ/kg]の差より次式となる.
w = hR2hR1
 成績係数ε[-]は,仕事率W[kW](電動の圧縮機による蒸気圧縮式の冷凍機であれば消費電力)と冷却量QE[kW](外部から冷媒への伝熱量)の比で次式から求められる.ここでG[kg/s]は冷媒の質量流量である.
式(3.4.1)  (3.4.1)
・空気調和 湿り空気線図
 冷却装置前後の乾球温度TA3TA4[℃]および湿球温度TW3TW4[℃]より,教科書参照資料の湿り空気線図を用いて,相対湿度φ3φ4[%]を求める.

3.4.8 参考文献
[5] 日本機械学会, 「伝熱工学」, 日本機械学会, (2005).
[6] NIST,REFPROP8.0,(2007).