佐賀大学理工学部 機械システム工学科
       環境流動システム学分野研究室

主な研究テーマ

 私たちの研究室では,主に数値シミュレーション及び実験により高速気体流れ場で生ずる流体現象を研究しています.
 数値シミュレーションを用いた研究は,数値流体力学(CFD)という分野で,コンピューター上で流体の流れをシミュレーションし,現象を解析することが主な目的になります.大規模な実験装置を製作するのにかかるコスト削減や通常の施設では危険な実験であっても再現可能であるという点から,自動車や航空機,ロケットの周りの流れや,ガスや液体を供給する配管内の流れ,気象,人間の血液の流れなどを解析する際など多くの分野で用いられています.
 また,実験による研究では,配管や流量計,ロケット等で使われるようなノズル内の流れをシュリーレン法で可視化したり,流れの圧力や温度を測定したりすることで,流れの状態を調べています.
 私たちの研究室では主に音の速さに近い流れを対象として研究を行っています.以下は私たちの研究室でここ数年の間に取り組んでいる主な研究テーマです.


臨界ノズルに関する研究(CFD) (瀬戸口教授との共同研究)

 
  
 将来の水素社会の構築のための一部を担う研究です.燃料電池車の普及へ向け,日本では水素ステーションの建設など,インフラの整備が急ピッチで行われています.その1つとして,水素の流量を計測するための流量計の開発が進められており,その一つとして流体力学の原理を応用して開発された臨界ノズルの使用が検討されています.私たちは臨界ノズル内の流れをコンピューターシミュレーションにより解析し,流量を高精度で計測する方法について研究しています.特に,燃料電池車の車載タンク内の圧力は70 MPa (おおよそ700気圧)であり,このような高圧の気体が臨界ノズル内を流れる場合にどのような現象が起こるのかについて詳細がわかっていません.よって,これを解明できるシミュレーションコードの開発ができれば,将来の水素社会構築に大きく貢献できることが期待されています.

矩形ノズル角部における縦渦と非平衡凝縮の干渉に関する研究(CFD,実験)

 航空機の超音速インテークやエジェクターでは矩形ノズルが使用されています.そのノズルの角部で発生する縦渦は,流れを不安定にし,効率の低下をもたらします.さらに,ノズル内を流れる気体は凝縮性気体を含んでいる場合が多く,凝縮性気体がノズル内で加速膨張し,凝縮が発生することによって,縦渦の構造が複雑になることが予想されています.そこで,私たちは非平衡凝縮を伴う矩形ノズル内の角部流れを数値シミュレーションを用い可視化し,渦構造を調べることで,流れの不安定性の解明につなげることを目的とし,研究を行っています.

超音速旋回流を用いた凝縮性気体の分離に関する研究(CFD,実験) (瀬戸口教授との共同研究)

 
 天然ガスに含まれる水分などの不純物を取り除く装置の研究をしています.凝縮性気体が超音速流中で急激に加速され膨張すると,気体が液体になるという凝縮現象が発生します.この研究では,流れ場に旋回を与えることで,外壁に近い領域で凝縮を発生させ凝縮性気体を回収するための装置数値シミュレーションで再現し,効果的な水分除去方法について研究しています.

ボルテックスチャンバーに関する研究(実験,CFD) (瀬戸口教授との共同研究)

 高温の熱源を発生させるための装置の研究をしています.圧縮空気を円管内周壁の接線方向に高速で流入させることで発生する旋回流は,流れを高温部と低温部にわける温度分離現象を引き起こすことが知られています.この温度分離現象を利用した装置として,ボルテックスチューブがあります.これは,旋回流により温度分離された低温流体を使い電子機器の発熱除去や切削加工時の冷却などに応用されています.
 旋回流を利用した温度分離装置には他にもボルテックスチャンバーというものがあります.これは,ボルテックスチューブと異なり,高温の熱源を利用を想定した装置で,最近研究が行われ始めました.私たちの研究室では,ボルテックスチャンバー内の温度上昇のメカニズムを解明するために,実験数値シミュレーションを使って研究を行っています.

遷音速バンプ上や翼面上で発生する衝撃波の制御に関する研究(CFD,実験)
(瀬戸口教授との共同研究)

 
 
 飛行機等の翼面上では衝撃波が発生します.この衝撃波の発生は,エネルギー損失や振動による翼の性能低下につながるため,これをどのようにして制御するかが重要となります.私たちの研究室では,流路中のバンプ上に生じる衝撃波に対して,キャビティを取り付けたり,非平衡凝縮を利用することで衝撃波を弱めたりするなど,様々なアイデアを提案し,研究を行っています.最近では,局所的な非平衡凝縮の発生を再現できるCFDコードを開発し,局所的に発生する非平衡凝縮が衝撃波に及ぼす影響を数値シミュレーションを用い解析しています.

超音速噴流に関する研究(CFD,実験)(瀬戸口教授との共同研究)

 超音速噴流は,ロケットなどの飛翔体,機器の冷却など様々な工業分野で使用されています.このような分野で,効率的に噴流を使うには,その構造を理解することが重要となります.私たちの研究室では,数値シミュレーションと実験により,噴流中のマッハディスクに及ぼす非平衡凝縮の影響や,衝突噴流に関する研究,乾き空気を湿分を含む気体中に噴出した場合にせん断層近傍で発生する非平衡凝縮の影響などを調べています.

ロケットノズルに関する研究(実験,CFD)(瀬戸口教授との共同研究)

 
 ロケットなどで使われるノズルの研究です.ロケットエンジンの始動時もしくは停止時には,ノズル内で急激に流れが発生もしくは停止される際に,流れが非対称になることがあります.その場合,過大な横推力が発生し,機器の破損が起こると言われています.私たちはこの要因となる剥離現象に着目し,この非対称流れや剥離を制御する手法について研究しています.